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2008年11月10日 (月)

Memory of 19 Vol.3・・・

Radiohead-Reckoner

たわいもない会話を、どれほどしていたのであろう。

受話器の向こう側に確かに存在する女性は

当然顔すらも知らず、会話をするのも今日が初めてのこと。

それはどちらもお互い様であるハズなのに何故か妙に会話が弾んだ気がした・・・。

こんな想いで会話をしているのはきっと私だけだろうと思った。

受話器の向こう女性はこういったことに慣れていて

しかも私はこんな場所に初めて訪れ、こんな経験も初めて

更にはまだ何事も大人としての行動は経験不足で、例え親元を離れていようと

社会のなんたるかにも触ることすら経験していないような

どこからどう見ても、田舎もん丸出しの

高校生のあどけなさが取れてもいないコゾー当然のガキである。

いや、それすらも理解できていなかったかも知れない。この時は。

そんな自分の立場を認めたくはないが

こんな世界も社会勉強の内かもと、ただそのくらいだけ認識していた部分もあった。

緊張がほぐれ、少しだけ冷静さを取り戻していくうちに

きっとからかい半分、もしくは時間潰しの相手をさせられているのだと

妙に楽しい会話の最中も、何処かでそんなことを考えながら

時間に身を任せ、楽しませてもらっていた。

そんな想いを吹っ飛ばす彼女からの一言を聞くまでは・・・・・。

 

「ねえ・・・。もし時間があるなら今から逢わない?」

痺れた・・・。

この彼女の一言は受話器を通して耳の中から頭の中を駆け巡り

体中を廻りながら手足の先まで痺れさせるほどの呪文となった・・・。

「はぇえ?」

呪文によって痺れた口からは、聞き返そうとした返事が

声が裏返ってしまいなんともお粗末な声を上げてしまった。

「別に、無理なら構わないんだけど・・・。」

次なる呪文で一瞬のウチに我に帰る。

「あっ!待って待って!大丈夫・・・。たぶん大丈夫!じゃなくて、絶対大丈夫!!」

先ほどまでの冷静さを一瞬で失い、そう答えたあと

今度はほんの一瞬だけ先輩の顔が浮かんだりもしたが

その返答には、何の根拠も理由もへったくれもなく

とっさに口から出てしまった・・・。

「じゃぁ~、何処かで待ち合わせね。」

また痺れた・・・。

受話器の向こうから待ち合わせの場所を指定してくる彼女の呪文を

私は手元にあったメモ用紙に少し震えながら必死にメモを取った。

彼女の言葉をメモしながら私は想っていた。

これが社会経験であり、なんとなく魅惑の大人の世界に今触れているのだと。

実際の話、少し冷静な自分もいた。

ここ仙台の地に来たばかりで、彼女の指定する先の場所など

全く解るハズもなかったワケだが、つい数分前に

失礼は承知で、彼女との会話のネタにしてもらっていた

この電話を取ってくれた先輩に聞くから大丈夫とも言ったし

本当にその場所に現れるかどうかも解らない状況も容易に想像できた。

「それじゃ~、絶対来てよ!待ってるから!」

「おいおい。オレは絶対行くよ!そっちが絶対来てよね!」

と、最後になるかも知れない言葉を交わし私は受話器をそっと置く・・・。

「おぉぉお~りゃぁぁあ~!!!」

ガッツポーズと共にわけのわからぬ歓喜の気合を叫んだ瞬間

両隣の部屋から壁を蹴る音と罵声が聞こえた。

「うるっせ~ぞっ!!」

その声にすぐ現実に引き戻され、狭っ苦しい部屋で更に小さくなり謝った・・・。

「す・・・すいません・・・・・。」

 

さあ困った。いや、正確には何も困っていない。

もう何が何だか落ち着かなくなり、ズボンのベルトを締め直してみたり

財布を出したりしまったりしている。

で、少し考えた。タイマーの時間を見ると残りは僅か2~3分程度・・・。

兎に角、ことの次第を先輩に告げなくてはならない。

と、思い立ったらすぐに自分の部屋を飛び出し

先輩が居るであろう同じつくりの小部屋のドアの前に立ち

少しだけ耳をあて、先輩の存在を確認するとコツコツと軽くドアをノックした。

受話器を抱え、満面の笑み顔をしながらドアを開ける先輩の姿があった。

先輩の顔をよくみると、口元は緩みながら会話を続けて

私に向けた眼は間違いなく睨み付けていた。

そして、慣れた手つきでメモ用紙にペンを走らせると

かろうじて読めるようなあからさまに汚い字と解る文字で

「もうすぐ終わるから待合室のロビーで待ってろ」

と書いてあった。

私は静かに細かく何度もうなずき、そっと先輩の部屋のドアを閉めた・・・。

 

「で、どうだったよ?」

子汚い雑居ビルの2階にある怪しい店舗、通称「テレクラ」と呼ばれる

店の入り口にある3人掛けのソファーの上で

落ち着きなく貧乏揺すりをする膝の上に、更に片肘を付き頭を乗せていると

その顔面さえも揺れに揺れ、そのまま視線を声の方に向けると

まるで大地震に一人だけ仁王立ちしているような先輩の姿が目に入った。

揺れ続ける私の顔を観て先輩がまた口を開く

「おいっ!すっげ~揺れてるけど、大丈夫か?」

ふと我に帰って背筋を伸ばすと目の前に先輩が立っていた。

「あっ!先輩、おちかれっす!!」

まだ動揺しているのか、激しい貧乏揺すりにまだ脳が揺れ続けているのか

「お疲れっす!」といいたいところをかんでしまい

「おちかれっす!」となってしまった・・・。

とたんに、間髪入れずに私はしゃべりだした。

「先輩聞いて下さい。オレ、あの先輩が取ってくれた電話の子とかくかくしかじか・・・。」

ことの話内容を所々かいつまんで、ほぼ全容を一気にまくしたてた・・・。

「んで、アポは何件取ったんだ?」

と、先輩は切り出した。

「えっ?・・・えぇぇ~っ???」

そうだっ!と思った。限られた「テレクラ」での60分という長きに渡る時間の中で

アポが一つしか取れないとして、もしその一つが失敗した時は

それはあえなく敗北を意味し、夢は夢のまま終わりを告げるのみである・・・。

「で、せんぱいは・・・・・。」

様子をうかがうように

そして自分の失敗を認めるように私は小さく囁きながら聞くと

「オレは4件!!」

どうだ参ったか!と思わせるその口ぶりに私は思わず声が出た。

「おォォォお~っ!!!」

普段は稽古中に袖を交えても、強くも何とも思ったこともないこの先輩が

この時ばかりはまるでオリンピックの金メダリストのように私は見えた。

「先輩、マジすげっす!!」

素直な感情と思いを込めて、初めてこの先輩を認めた瞬間だった・・・。

そしてこの後、この子汚い雑居ビルから外に出て

先輩から丁寧に私の待ち合わせ場所までの説明を道すがら教えてもらい。

なんとそこから一番近い「ホテル」の場所までをもご教授して頂いた。

更に、お互いことが済んだら軽く一杯飲んで帰ろうと

先輩との待ち合わせ場所まで決めて

待ち合わせ時間が近づいている私を急かし

何かあったら困るからと、自分の財布から諭吉を1枚取り出し

「これはお前の餞別代りの祝儀だと思ってもって行け!」

なんて云って手渡し、遠慮しながらも私は両手でそれを受け取ると

「先輩、オレ、先輩について行くっす!」

と、普段心にも無いことが思わず口からこぼれてしまった・・・。

かくして、お互い振り返りながら手を振りあうと

先輩の姿が見えなくなったとたん、私はおもいっきりダッシュをぶちかまし

電話越しの声だけしか知らない女性との

待ち合わせ場所に向かったのである・・・・・。

 

 

 

Vol.4に続く・・・・・

 

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コメント

Yupee san絶対小説家bookになれますよhappy01まるでmobilephoneで小説読んでる気分ですconfident

仙台の方の大学ってもしかして...sign02
私の友達が通ってた大学かなぁ??
友達は高校球児でその大学に通ってたみたいですけどwink

vol.4楽しみにしてますねnote

投稿: チョロタン | 2008年11月10日 (月) 22:18

>>チョロタンさん どもども。
いやいや。小説家なんて・・・。
オレのは「作文」に毛が生えたようなものなんでcoldsweats01
でもでも、そう言ってもらえると凄く嬉しいです。
ありがとうございますsign03

つか、オレの通っていた学校は・・・
ここでは伏せておきます。すいません・・・。bearing

で、このお話はやっと中盤なので
ゆっくり暇つぶし程度にもう少しお付き合いしてやって下さい・・・。
突っ込み所も多々あると思いますが・・・・・。coldsweats01

投稿: Yupee | 2008年11月11日 (火) 08:08

やべえぇぇ~っ、Yupee!!

くっついた腹筋、またちぎれたべ~!!

最高です!

その先輩知りてえ~

君の文才はホントめっちゃ素晴らしいです。

将来、本だそうよ^^

俺ぜったい買うよ!

VOL.4 心から楽しみにしています♪

投稿: Michi | 2008年11月11日 (火) 17:41

言い忘れ・・・

よかったら

Yupeeのブログ

俺っちのほうで紹介してもいいかい??

投稿: Michi | 2008年11月11日 (火) 18:02

>>Michi どもども。
おっと!わざわざ連投してまで、ほんとありがとう!confident
つか、Michiのもオレのマイリンクに入れときます。
オレのは、君の判断に任せます・・・。

つか、ただ単にだらだらと思い付く限りのことを書いてるだけなのね。実際・・・。
つか、この先輩は・・・
ココだけの話・・・実在いたします・・・。happy02
でも、絶対内緒!秘密です!

君は、こんな状況の生活を一緒にしてきたから
なんとなく、この当時のことが想い出されるでしょ?

ここからの続きと展開は・・・
次回をお楽しみに!good

投稿: Yupee | 2008年11月11日 (火) 20:28

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