2008年12月19日 (金)

Memory of 19 Vol.7・・・

Infected Mushroom-Heavy weight

腕時計も何も持っていなかった私は、商店街の時計柱で時刻を確認すると

「うわっ!やっべー!!」

と、足を速めた。

寮までは電車を使って帰るのだが

時刻はすでに最終電車が終わってしまう時間まで

あと15分程度しかなかったのである・・・。

先輩と待ち合わせた居酒屋には、もうすぐまで来ていたが

もし先輩がそこにいなかった場合、最終電車はぎりぎり間に合うかどうかで

それより何より、規律厳しい寮の門限には絶対に間に合わない・・・。

「マジでヤバいぜ・・・」

先輩が一緒であれば

暗黙の了解のうちに、そんな門限さえも許されることなのだが

もし先輩がいなく、私一人だけで帰ったとしたら

寮の規則に反したとして

どんなことが待ってるかも考えられないくらいの、ヤバい状況だった・・・。

そう考えると、さっきまでの夢の世界が全てすっ飛び

今度は厳しい現実世界に戒められ、青ざめながら脅えた・・・。

もう待ち合わせの居酒屋に、先輩はいないかも知れないと思った・・・。

けれどそこに行かなければ、この現実の先は無い。

いや、もし先輩が私と同じく、夢のような想いをしていたとしたら

先輩がこの待ち合わせ場所に着くのも

きっとこのくらいの時間になるだろう・・・とも思った。

そんなこんなで息を切らしながら、居酒屋のビルに辿り着いた私は

思い切り願いと祈りを込めて、店のドアを開けたのである・・・。

 

先輩の姿は

開けてすぐの、カウンターの前にしっかりとあった。

本当に救われた・・・。と、思った・・・。

けれど、ほっとするのもつかの間

先輩の顔を見るとすっかり酒が入り

しかも、その目はもの凄い眼光で私を睨みつけている・・・。

思わずビビって先輩の眼光から目を伏せた。

「うぅぅオイッ!!!」

まるで猛獣さながらに、先輩が私の顔を見るなり吠える・・・。

「すませんっ!!先輩っ!!遅くなってしまいました・・・。」

と、取りあえず姿勢を正し、開口一番深々と頭を下げ、丁寧に謝った・・・。

「取りあえず座れっ!!」

「ハイっ!」

絶対殴られると思ったので、その場の床に正座しようとすると

「つか、何してんだ!こっち!こごっ!!」

と、隣の椅子を引き、指をさした・・・。

「はい・・・。」

ものっ凄い遠慮する素振りをみせながら

ワザとらしいくらい申し訳なさそうに、先輩の横に私は座る・・・。

「オイっ!どうだったの?・・・先ず?・・・」

そう問いかける先輩の目を見ると、口元以外は全然笑っていないことが解り

取りあえず、あたりさわりのないことを答えなくてはと、切り出した・・・。

「はい・・・。先輩のおかげで、いい想いをすることが出来まし・・・ぐえぇっ!!」

「た。」と、言い切る前に

先輩の丸太のように太い腕から生えた

グローブみたいな両手が、私の首を締めつけ、そのまま頭を揺らした。

これには本当に殺されると思って

夢中でタップをしながら先輩の肩を叩いた・・・。

気が遠くなり、「落ちる」寸前に先輩の手が離れ

普通に「げふぉっ!げふぉっ!」と咳きこんだ私は

すぐに姿勢を正すと、先輩に向かってまた頭を下げた。

「す・・・すません゛っ!!!」

「ぜんっ・・・ぜん、怒ってないしっ!!」

と、言った先輩の言葉に顔を上げると

先輩は目の前のジョッキを豪快に、一気に飲み干した。

と、同時に「ドンッ!」

ジョッキが割れてしまいそうな勢いで、カウンターに叩きつけるように置いた。

「もう行くぞ!!」

と、腰を上げる先輩に私が「はい!」

と、返事をするも、その返事に重なりながら先輩も切り返した。

「お前のおごりな!ここっ!!」

え~っ?!とも思ったが、ここは素直に返事をすることにした・・・。

「うっすっ・・・」

 

駅までのタクシーを拾い、何とか終電に間に合うことができた私達二人・・・。

私は週末の、終電の人の多さに感心しながら

居酒屋の会計金額を思い返し

レジをしてくれた店員の言葉も、同時に思い返していた・・・。

「お客様、お一人様で、ずいぶんと長い時間座られていて

お酒の量もかなり進んでいたので、心配をいたしておりましたが

お連れ様のお迎えが来てくれたので、本当に助かりました・・・。」

合計金額¥12,000の数字に

わなわなと震えながら立ちすくむ私に

店員がいらぬ感謝を小さく呟いたあと、私も小声で店員にそっと問いだした。

「あの~、あの方、何時頃からここにいました?」

「ん~・・・開店して間もなくですから、7時前くらいですかね・・・。」

「・・・・・。」

その時刻は丁度

私は彼女と居酒屋に入って、すぐくらいの時刻である・・・。

 

人が多いと云っても、流石に終電ということで

先輩の隣の座席に座ることも出来たが

私はあえて先輩に遠慮し、先輩の斜め前の吊革に捉まり立っていた・・・。

電車が走り出してすぐの、次の駅にも到着しないくらいの、ほんの僅かな時間に

先輩は大きな体を固まらせながら、普通に眠り込んでしまった・・・。

またしばらくすると先輩は、吊革につかまりながら立つ私の目の前で

予定外に呑み過ぎた酒のせいなのか、一切周りを気にすることも無く

デカイ口を開け、猛獣さながらの「大いびき」をあげ始めた・・・。

かなりの不快な騒音に

車両の中が「何事だ?!」と、ざわつくほどの「いびき」を発しながら

デカイ体にデカイ怖顔で爆眠する先輩の姿は

どっからどう見ても、愛しさを感じさせることは皆無であるが

腕を組み、少し眉間にしわを寄せながらつぶる先輩の瞼を見ていると

その姿は、冬が近づく仙台の冷たく寒い秋の夜風よりも

数倍哀愁が感じられる思いがした・・・。

やっぱり先輩は、金メダリストでもなんでもなく

どっからどうみても先輩は、変わらず、そのままの先輩であった・・・。

哀しいかなこれが、納得できる現実の答えだった・・・

ような気がしてしまった・・・。

そして、その哀しすぎる現実を眺めていると

何故か突然、私の中に寒気が走ったのである・・・。

 

いつもの

寮の大きい風呂とは違うシャワーと、裸で過ごした時間があったため

ちと、風邪を引いてしまったかな?と、思った・・・。

到着駅が近づくにつれ、それは断じて違うことに

私はやっと、気が付いた・・・。

と、同時に、その寒気は更に一層強まり

今度は思わず、「おぉぉ・・・」と声が出るほど、大きな身震いをした・・・。

何故なら、その寒気のワケとは・・・

到着駅から寮までの

長~く、歩かねばならない道のりを

何より目の前で、高いびきをあげながら寝てしまっている

0.1トンを余裕で超えていたこの大男を

私は誰の手も借りられず、たった一人で

なんとかして、担ぎ歩いて帰らなければならないという

絶対に逃れられない現実が

今夜の、本当に夢のような一夜の出来事と、その全ての想いを

秋の夜風など、ことさら可愛く思えるくらいの

まるで凍てつきそうに冷たく寒い、真冬の嵐の強風となって

私の心の中から全て吹き飛ばし

身体は勿論、心の底まで凍えさせていたからで・・・あった・・・・・。

・・・・・

・・・

 

 

こんな物語を書いたきっかけは、九州旅行に行った折

中洲の夜の繁華街のあるお店で、私の隣に座ってくれた女の子が

歳若く、20歳になったばかりということで

鼻下を伸ばしながら、お互いの19歳頃の話となった時

恥ずかしながら私の同じ歳の頃と比べると、ずいぶん大人の世界の話だなと

妙に感心させられた会話を交わしたからだ・・・。

そこで私は当時のことを思い出しながら、自分の体験をもとに

少~しだけ色と華を加えた、Blogらしからぬ物語を書いてみたのである・・・。

 

私は常々、「普通の人生」というものは

人の人生には絶対存在しないものと思っている・・・。

例えにもならないかも知れないが

自分だけの狭い部屋に閉じこもり

外界との肌の交流を全て閉ざした生活を送っている人がいたとしても

私から観て、そのような人生もまた普通とは考えられず

逆にそのような生活を送っている人から観て

別に自慢できることもない私の人生だが

細かくある日のことを語れば、それは普通ではないと思うだろう・・・。

勿論それは、生活環境と価値観の違いと云ってしまえば身も蓋もないワケだが・・・。

人から生まれた人間であれば

どんな人だろうとその人生の節々には、大なり小なりのドラマが存在し

それを自分以外の誰かに語れば、それは全て物語となる・・・。

この世に生まれてからその役割を終えるまで

まったく同じことを繰り返すのみならば

それは人ではなく、無機質な感情の無い機械でしかないし

そのようなことは、ただの「物」のみに許されることである・・・。

人はどのようなカタチであろうと

人として生きる過程には無数の物語が存在し

それは人と人とが接することによって、無限の組み合わせの物語となる・・・。

 

私が大好きな人の物語から学ぶそれは

時に生きるためのヒントとなり、戒めとなる。

この世には、夢が叶えられる人もいれば、夢破れた人もあり

想像もつかないほどの理不尽なことに見舞われる人だっている。

しかしどんな立場であれ、それぞれの物語の真髄は

当人以外に理解することが出来ないことも、確かなことなのだ・・・。

そんな無限の物語から私が教えられたことは

どんな人生であれ、考え方を少しだけ変えることさえできれば

良くにも悪くにもなると云うことだ。

素晴らしい人生だと最後に言えた人は

きっと人生の主人公である自分の物語の最後なんかを

考えもしていない人かも知れない・・・。

それはやはり、人が存在する限り

人の物語は無限に存在し、継続し続けるワケだから。

そして私も、その人生と云う、答えのない答えと意味を探しながら

この先の、自分自身の物語をつくり続けて人生を過ごして行く・・・・・。

・・・・・

・・・

 

 

なんか、私のような人間がとても偉そうに

しかも、まるで、最終回か何かのようにまとめてしまいましたが

まだまだ私の書ける限り、このBlogは続きますので・・・。

で、実は今回の「テレクラ」ネタに関しても

この後に続くような、書きたいお話の展開があるワケなんですが

それはまた、追々機会をうかがって、ココにて披露するかも知れません・・・。

つか、このお話は、「物語」であって

私の体験したことを素にしていますが、あくまで、フィクションであります・・・。

リアルさが足りないのも、その理由です・・・。

果たして、こんな「物語」が

秋の夜長の、皆さんの暇つぶしになってくれたのでしょうか?

てなことで

何より、私のとても長くて読みづらい駄文と、駄話に

最後まで付き合っていただいた方、本当にありがとうございました!

なんでもいいので、感想コメントなんかを書いて頂けると

とても励みになるので

読んでいただいたついでに、そんなこともお願いして

このお話を終わりにしたいと思います・・・・・。

 

 

 

 

Memory of 19 ・・・・・ Fin

 

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2008年12月17日 (水)

Memory of 19 Vol.6・・・

Oasis-Wonderwall

シャワーの音を聞きながら

薄暗い部屋の中で、一人思考が混乱している私がいた・・・。

「おいおい・・・。来ちゃったよ・・・。こんなとこに・・・。」

普通に足が震えた・・・。

あわよくばと想う気持ちは

先輩に連れられて街に訪れる時から考えてはいたものの

まさかまさかの、初めての「テレクラ」なるもので

あれよあれよとこんな形で、ここまで何も障害もなくすんなりくるとは

夢の中でさえも想像していなかったことである・・・。

で、本当に夢かも知れないと思ってもいたので

太ももをつねったり顔を軽く叩いたりしてみて

TVのドラマでしていたようなこんな動作は、絶対にありえないと思っていたけれど

実際自分がそんな場面に遭遇すると

本当にやってみたりするもんなんだと感心したりもした・・・。

兎に角落ち着かず、部屋のあちらこちらを覗いてみたり歩き回ったりして

高鳴る気持ちをなんとか抑えようと挙動不審な動きをした・・・。

と、その時、シャワーの音が止み、浴室のドアが開く音が聞こえた。

何故か何故なのか、さっきまでうろちょろとしていたのに

その音に「ハッ!」っとなり

TVの前のソファーの上で正座をし、姿勢を正してしまった・・・。

一瞬見てしまったタオル一枚だけの彼女の姿に

私は視線の先もままならなくなり

彼女の立っている場所と違うところに目を伏せていると

背後から彼女の気配と声がした

「ねえ。軽くシャワー浴びてきたら・・・。」

「はい。」

即答で私は答えた・・・。

 

何度も夢ではないことを確認しながら

もしこれが夢であっても、ことが終えるまでは絶対に覚めないで欲しいと

彼女と唇を重ねる度に、そして抱きながら抱かれながら

美しい彼女の顔と体に溺れるように彼女を求める私がいた・・・。

しかし、そんな行為に溺れている最中でも

初めて彼女と唇を重ねた後に、彼女が言った言葉の意味も考えていた・・・。

「私ね、実は結婚もしてるし、子供もいるの・・・。」

シャワーを浴び終え出ると

先ほどよりも更に暗くなっていた部屋のベットの上で

何も身につけていない彼女の姿を見て、すぐに

男として抑えきれることの出来ない衝動と、行動に駆られた私に

何故か突然、彼女が呟いてきたのだ・・・。

「そんなの関係無いよ・・・。」

そう答えるしかなかった・・・。

そう答えることしかできなかった・・・。

この当時、まだまだ若造もいいところのガキだった私だが

女性との体の繋がりを経験していなかったワケでは無い。

しかし、まだまだ経験不足のガキだったことは自分で百も承知であったため

素直にそのこともすでに彼女にカミングアウトしていた・・・。

そんな私を、彼女はまるで天使のように優しくリードしてくれたし

その時々に魅せる彼女の姿は

まるで手慣れた娼婦のように感じるほど

それまで経験することの無かったような、大人の男と女の体の繋がり方を

私に違和感を抱かせることなく教えてくれた・・・。

そんな彼女のやり方に

私は大人の男としてのマナーと、男の喜びを知り

そして彼女はただの一人の女として、女の喜びを私に求め

お互い、ただただその欲求を満たすためだけの如く

体が感じる想いだけを求めあったのである・・・。

本当に夢ならいつまでも覚めないでいて欲しかった・・・

と、願わずにはいられない

本当に夢のような甘い時間であった・・・。

 

ことが終え、少しの間私の体にもたれながら

私の体を触り続ける彼女の姿を見ながら、私は考えていた。

私は彼女のことを、何も知らない・・・。

彼女も私のことを、何も知らない・・・。

もしかして、私に言っていた名前は、全くデタラメかも知れない・・・。

でもそれは、本当のことかも知れない・・・。

彼女も私の語った名前など、嘘だと思っているかも知れない・・・。

そんな彼女は大人の女性であるにも関わらず、人の妻であるという事実・・・。

ガキだった私が、普段TVのドラマや映画でしか見たことがないようなことを

実際自分が、経験してしまっているという事実・・・。

そしてこのようなことも

もしかして全て、嘘かも知れない現実・・・。

そんなことを静かに考えている私の顔を

美しい彼女の顔が、ゆっくりと優しく覗きこみ

妖しく「ふふっ。」っとだけ笑ってから

かけ布団の奥の、深い闇の部分に、その美しい顔が消えた・・・。

そしてついさっきまで、力なく萎えていた私の体の一部を

彼女が妖しい妖力を使いながら、眠りから覚ます行為を再び始めると

もうそんな私の小さな考えや想いなど

どうでもよくなってしまった・・・。

そして二人は、お互いの体を、再び求め始めたのである・・・。

 

「また何処かで逢えることがあったら奇跡だよね・・・。」

繁華街のはずれの路地を来た方角へ、二人寄り添いながら歩き出ると

いつまでも別れを惜しんでいる私に向かって、彼女はそう切り出した・・・。

携帯もポケベルも無い、ほんの少しだけ前の時代である・・・。

彼女が本当に人妻であるならば

どんなことがあっても私から連絡を取るわけにはいかないし

それに、まだ何も世の中を知らないガキの私に

わざわざ危険をおかしてまで

簡単に連絡できるすべを教えるワケがない・・・。

彼女もこんなことは初めての経験で、一度限りのことだと言っていた・・・。

本当か嘘かは解らなかったが

その時の私は、彼女の言葉を嘘だと思えず、全て信じた・・・。

夢だと思って彼女を・・・

そしてこんな夢のような時間を、この一夜だけで失いたくなかったが

大人としてのマナーと、大人の女性との繋がり方を私に教え

更に大人の男として、今夜の出来事を認めてくれた彼女に対して

その礼儀に逆らうほど私は、まだ大人にはなれなかった・・・。

繋いだ手から彼女のぬくもりが消えるとともに

彼女と私はお互いに違う方向に歩き始め

しばらく行ったところで後ろを振り返ると

もう、そこに彼女の姿は無かった・・・。

そして私は、やっと夢の世界から現実の世界に引き戻されたように

ゆっくりと向きを変え、静かに歩き始めると

先輩の、思い出したくもないあのふざけたデカイ顔が、嫌でも頭にちらつき

先輩と待ち合わせた居酒屋に向かって

戻ることのない、夢のように甘味なひと時と

ついさっきまで繋いでいた彼女の

なんとも言えない手のぬくもりを、何度も何度も思い出しながら

一人ご機嫌な足取りで

再び街に向かって進み始めた・・・・・。

 

 

 

 

Vol.7に続く・・・・・

 

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2008年11月14日 (金)

Memory of 19 Vol.5・・・

Younger Brother-Ribbon on a Branch

先輩と待ち合わせしている居酒屋では無く

彼女が案内してくれた居酒屋で食事をしながら

彼女の勧めるままに、まだ慣れてもいない酒を口にしながら

先ほどの、電話越しにしゃべりきれなかった会話を、お互い楽しんだ・・・。

 

私の歳より7つ上だという彼女は

その当時の私から見ると、それはとても大人の女性に見え

お酒の効力が、今より数倍も早く効いてしまっている若造の私は

美しい大人の女性を目の前にして、二人きりでいるこの時間が

何より初めての経験であり

そしてこの、夢のような時間が、いつまでも続いてほしいとばかりに

私自身のことを語るよりも、彼女の話すことだけを

赤ら顔につくりのない笑顔で、ただただ楽しく聞いていた・・・。

いや正確に云うと、今でもその時の会話の内容は

ほとんど思い出すことが出来ないので

想ったより酔いのまわるのが早かった心と体は

その場の雰囲気を壊すまいと一生懸命にとりつくり

初めて経験するこの時間と雰囲気に

ど~しても、この後の展開を期待せずにはいられず

そんな若さゆえの、極度の緊張から来るものを

ただ見破られないようにしていただけなのかも知れない・・・。

きっとその時の光景は今思い返しても

どう見ても不釣り合いな男女にしか見えない、不自然な二人だっただろう・・・。

それでも私は心から、彼女との会話を楽しんだ。

それはこの日、この時が

初めて逢った二人とは、まるで感じさせることのないようにと・・・。

 

「ねえ。これからどうしようか?」

どのくらいの時間、どのくらいの酒を飲み

そしてどのくらいの会話を楽しんだだろうか?

楽しい会話の途中で、そう切り返してきたのは

目の前にいる、美しい大人の女性にしか見えない彼女からだった・・・。

どう答えていいか解らなかったが

私は、若さゆえの餓えを抑え込むようにしながら

少し間を空けて素直に答えた・・・。

「お・・・お任せします・・・。」

私の答えがすでに解っていたのか、彼女は少しの間も空けず返答した。

「それじゃ~、ここから出ましょ。」

 

目一杯の大人の男を演じてもみたが、そんな無理はしなくてもいいとばかりに

この居酒屋の会計は、私がトイレに行っている僅かな時間の間に

すでに彼女が済ませてくれていた。

そして、私も彼女の言うがまま彼女の好意に甘えた・・・。

建物の外に出ると、仙台の秋の冷たい夜風が

慣れない酒に暖められた私の体に、十分過ぎるくらい響いた・・・。

すると、姉が弟の心配をするように

私の様子をうかがいながら、彼女は私の手を取り、言う。

「んじゃ、行こ。」

さっきまでの、居酒屋でのおしゃべりな彼女が嘘だったように・・・

何もしゃべることなく、ただ「寒いね」、とだけ呟いた彼女は

何故か歩く進路に、何の迷いを見せることなく歩き続けた・・・。

私はそんな彼女のぬくもりを、酒以上の酔いを覚えるほど体に感じてしまい

高鳴る心臓が破裂しないように祈りながら

ただ黙って彼女に従って歩き続けた・・・。

 

そして二人は繁華街を通り抜け

人通りもまばらな、ある路地に辿りついた。

その路地の周辺に私は初めて訪れたが

何故か記憶にある場所であることに気が付いた・・・。

そう。そこは先輩が教えてくれた街の繁華街のはずれにある

今でこそは「ブティックホテル」と呼ばれる、ホテルのある通りである・・・。

ぴたりと寄り添い歩く彼女に悟られまいと

頭をキョロキョロさせることも出来ない私は、眼球の動きだけで辺りを見回し

高鳴る心臓が、震度4から一気に震度7まで跳ね上がる動きになった・・・。

そして彼女は何も言わぬまま

その路地にある一つの建物の中へ

何も抵抗する素振りも見せない私の腕を

細い両腕で抱えるようにしながら足早に引き入れたのである・・・。

この時私は

微かに震えていた私の腕の動きを

絶対彼女に悟られないようにと、ただそれだけを考えていた・・・・・。

 

 

 

 

Vol.6に続く・・・・・

 

 

 

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2008年11月12日 (水)

Memory of 19 Vol.4・・・

Foo Fighters-Let It Die

「黄色いバックとクリームのジャケット・・・黄色のバックとクリームのジャケット・・・」

私は教えてもらった彼女の特徴を、一人つぶやきながら

商店街の人混みをかき分けるようにして

足早に待ち合わせ場所へと急いだ・・・。

途中、時間を気にすると

待ち合わせの時間まで十分時間があったのだが

若気の至りが足を速めているのか、何より先に結果を知りたいが如く

それとも何かの呪文が効いているのか

ぶつぶつと呟く魔法にかかってしまった木偶人形のように

兎に角夢中で、街中を小走りに進んだ・・・。

 

そんなこんなで待ち合わせ場所に辿り着くと

その場所は、まだ仙台の街をよく知らない私すらも唯一解るくらい

とても解り易い有名ビルの、その前の通りである為か

週末は土曜日の、日暮れ後の人の数の多さが

あれだけ足早に行動していた私の動きをピタリと止めさせ

その場でしばし呆然となり、半口を開けた私の顔と頭は

ただただ左右にゆっくりと、回りをうかがうことしか出来なかった。

「うっそ~ん・・・ひ・・・人が多すぎだろ・・・ここ・・・。」

半泣き声で、思わずぽつりとつぶやいてしまった・・・。

兎に角、それらしきひとを探さなくては・・・。

と、それとなしに周囲を見渡す。

交差点向こうの時計柱に目をやると

時刻は約束した時間まで、あと5分ほどであることが解り

もしかしたら、もうこの人混みの中にいるのかも知れないと思い

ぶつぶつと呟いてきたあの言葉を、今度は祈りを込めながら

頭の中で何度も繰り返しながら周囲を見渡す・・・。

 

そうこうしている間に、時刻は待ち合わせの時間となった。

数分間だが、この人混みを観察していて気が付いたことがあった・・・。

繁華街の真ん中辺りにあるこの場所

とても有名なのか、人と待ち合わせするには十分の場所ってことで

あっち向いてもこっち見ても、そこらじゅう人を待つ人だらけ・・・。

いや、自分がそんな状況だからそう見えてしまったのか

ビルの店舗の入り口を避けるように、ただただ突っ立ている人が

兎に角、めちゃくちゃいることが解った・・・。

なので、私は

そのただ立って、人を待っているような女性ばかりが目に付き

もしかしたら、私の様子をうかがうために

違う服装で来ているかも知れないと思うようになり

そうなると

この場所にいる全ての女性が、電話の彼女に思えてきてしまった・・・。

そう思うと、頭の中から順に行動もテンパってしまい

わざと人を探しているような大げさな態度をしながらも、それでいて

それとない特徴の女性を見つけても、声をかけることもできなく

終いには交差点を渡り反対側の方まで行って、キョロキョロしながら

不審者のように歩いては、立ち止ったりしていた・・・。

で、時刻を気にすると

約束の時間より15分ほど先を、長い針は指していたのである・・・。

 

「や・・・やられた・・・。」

と思った・・・。

こんなことは初めてのことだと、電話越しで言ったのが悪かったのか

不審者のように、不審に辺りを見渡していたのが不味かったのか

それとも最初から、ただからかわられていただけなのか・・・

ようような想いが私の頭の中をかけめぐった・・・。

私は大きく肩を落とし、しょぼくれながら

この結果に、どうしても想像してしまう、ニヤついた先輩のデカイ顔を

この現実と一緒に振り払うように、頭を大きく左右に数回振った・・・。

そして、先輩と待ち合わせたこの近くの居酒屋に

ゆっくりと向かうことにした・・・。

 

さっきまで何回も、私が行ったり来たりしていた

電話の女性に指定された待ち合わせ場所を、静かに通過し

小さな路地を普通に通り過ぎた・・・。

と、その時

背後から不意を衝いて聞こえた女性の声が、私の動きを止めた・・・。

「あの~・・・。」

え?っと思い、何も考えずに振り向くと

そこには薄黄色いバックと、クリーム色のジャケットとスカートの

髪の長い、綺麗な「お姉さま」が、一人立っていたのである・・・・・。

 

 

 

Vol.5に続く・・・・・

 

 

 

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2008年11月10日 (月)

Memory of 19 Vol.3・・・

Radiohead-Reckoner

たわいもない会話を、どれほどしていたのであろう。

受話器の向こう側に確かに存在する女性は

当然顔すらも知らず、会話をするのも今日が初めてのこと。

それはどちらもお互い様であるハズなのに何故か妙に会話が弾んだ気がした・・・。

こんな想いで会話をしているのはきっと私だけだろうと思った。

受話器の向こう女性はこういったことに慣れていて

しかも私はこんな場所に初めて訪れ、こんな経験も初めて

更にはまだ何事も大人としての行動は経験不足で、例え親元を離れていようと

社会のなんたるかにも触ることすら経験していないような

どこからどう見ても、田舎もん丸出しの

高校生のあどけなさが取れてもいないコゾー当然のガキである。

いや、それすらも理解できていなかったかも知れない。この時は。

そんな自分の立場を認めたくはないが

こんな世界も社会勉強の内かもと、ただそのくらいだけ認識していた部分もあった。

緊張がほぐれ、少しだけ冷静さを取り戻していくうちに

きっとからかい半分、もしくは時間潰しの相手をさせられているのだと

妙に楽しい会話の最中も、何処かでそんなことを考えながら

時間に身を任せ、楽しませてもらっていた。

そんな想いを吹っ飛ばす彼女からの一言を聞くまでは・・・・・。

 

「ねえ・・・。もし時間があるなら今から逢わない?」

痺れた・・・。

この彼女の一言は受話器を通して耳の中から頭の中を駆け巡り

体中を廻りながら手足の先まで痺れさせるほどの呪文となった・・・。

「はぇえ?」

呪文によって痺れた口からは、聞き返そうとした返事が

声が裏返ってしまいなんともお粗末な声を上げてしまった。

「別に、無理なら構わないんだけど・・・。」

次なる呪文で一瞬のウチに我に帰る。

「あっ!待って待って!大丈夫・・・。たぶん大丈夫!じゃなくて、絶対大丈夫!!」

先ほどまでの冷静さを一瞬で失い、そう答えたあと

今度はほんの一瞬だけ先輩の顔が浮かんだりもしたが

その返答には、何の根拠も理由もへったくれもなく

とっさに口から出てしまった・・・。

「じゃぁ~、何処かで待ち合わせね。」

また痺れた・・・。

受話器の向こうから待ち合わせの場所を指定してくる彼女の呪文を

私は手元にあったメモ用紙に少し震えながら必死にメモを取った。

彼女の言葉をメモしながら私は想っていた。

これが社会経験であり、なんとなく魅惑の大人の世界に今触れているのだと。

実際の話、少し冷静な自分もいた。

ここ仙台の地に来たばかりで、彼女の指定する先の場所など

全く解るハズもなかったワケだが、つい数分前に

失礼は承知で、彼女との会話のネタにしてもらっていた

この電話を取ってくれた先輩に聞くから大丈夫とも言ったし

本当にその場所に現れるかどうかも解らない状況も容易に想像できた。

「それじゃ~、絶対来てよ!待ってるから!」

「おいおい。オレは絶対行くよ!そっちが絶対来てよね!」

と、最後になるかも知れない言葉を交わし私は受話器をそっと置く・・・。

「おぉぉお~りゃぁぁあ~!!!」

ガッツポーズと共にわけのわからぬ歓喜の気合を叫んだ瞬間

両隣の部屋から壁を蹴る音と罵声が聞こえた。

「うるっせ~ぞっ!!」

その声にすぐ現実に引き戻され、狭っ苦しい部屋で更に小さくなり謝った・・・。

「す・・・すいません・・・・・。」

 

さあ困った。いや、正確には何も困っていない。

もう何が何だか落ち着かなくなり、ズボンのベルトを締め直してみたり

財布を出したりしまったりしている。

で、少し考えた。タイマーの時間を見ると残りは僅か2~3分程度・・・。

兎に角、ことの次第を先輩に告げなくてはならない。

と、思い立ったらすぐに自分の部屋を飛び出し

先輩が居るであろう同じつくりの小部屋のドアの前に立ち

少しだけ耳をあて、先輩の存在を確認するとコツコツと軽くドアをノックした。

受話器を抱え、満面の笑み顔をしながらドアを開ける先輩の姿があった。

先輩の顔をよくみると、口元は緩みながら会話を続けて

私に向けた眼は間違いなく睨み付けていた。

そして、慣れた手つきでメモ用紙にペンを走らせると

かろうじて読めるようなあからさまに汚い字と解る文字で

「もうすぐ終わるから待合室のロビーで待ってろ」

と書いてあった。

私は静かに細かく何度もうなずき、そっと先輩の部屋のドアを閉めた・・・。

 

「で、どうだったよ?」

子汚い雑居ビルの2階にある怪しい店舗、通称「テレクラ」と呼ばれる

店の入り口にある3人掛けのソファーの上で

落ち着きなく貧乏揺すりをする膝の上に、更に片肘を付き頭を乗せていると

その顔面さえも揺れに揺れ、そのまま視線を声の方に向けると

まるで大地震に一人だけ仁王立ちしているような先輩の姿が目に入った。

揺れ続ける私の顔を観て先輩がまた口を開く

「おいっ!すっげ~揺れてるけど、大丈夫か?」

ふと我に帰って背筋を伸ばすと目の前に先輩が立っていた。

「あっ!先輩、おちかれっす!!」

まだ動揺しているのか、激しい貧乏揺すりにまだ脳が揺れ続けているのか

「お疲れっす!」といいたいところをかんでしまい

「おちかれっす!」となってしまった・・・。

とたんに、間髪入れずに私はしゃべりだした。

「先輩聞いて下さい。オレ、あの先輩が取ってくれた電話の子とかくかくしかじか・・・。」

ことの話内容を所々かいつまんで、ほぼ全容を一気にまくしたてた・・・。

「んで、アポは何件取ったんだ?」

と、先輩は切り出した。

「えっ?・・・えぇぇ~っ???」

そうだっ!と思った。限られた「テレクラ」での60分という長きに渡る時間の中で

アポが一つしか取れないとして、もしその一つが失敗した時は

それはあえなく敗北を意味し、夢は夢のまま終わりを告げるのみである・・・。

「で、せんぱいは・・・・・。」

様子をうかがうように

そして自分の失敗を認めるように私は小さく囁きながら聞くと

「オレは4件!!」

どうだ参ったか!と思わせるその口ぶりに私は思わず声が出た。

「おォォォお~っ!!!」

普段は稽古中に袖を交えても、強くも何とも思ったこともないこの先輩が

この時ばかりはまるでオリンピックの金メダリストのように私は見えた。

「先輩、マジすげっす!!」

素直な感情と思いを込めて、初めてこの先輩を認めた瞬間だった・・・。

そしてこの後、この子汚い雑居ビルから外に出て

先輩から丁寧に私の待ち合わせ場所までの説明を道すがら教えてもらい。

なんとそこから一番近い「ホテル」の場所までをもご教授して頂いた。

更に、お互いことが済んだら軽く一杯飲んで帰ろうと

先輩との待ち合わせ場所まで決めて

待ち合わせ時間が近づいている私を急かし

何かあったら困るからと、自分の財布から諭吉を1枚取り出し

「これはお前の餞別代りの祝儀だと思ってもって行け!」

なんて云って手渡し、遠慮しながらも私は両手でそれを受け取ると

「先輩、オレ、先輩について行くっす!」

と、普段心にも無いことが思わず口からこぼれてしまった・・・。

かくして、お互い振り返りながら手を振りあうと

先輩の姿が見えなくなったとたん、私はおもいっきりダッシュをぶちかまし

電話越しの声だけしか知らない女性との

待ち合わせ場所に向かったのである・・・・・。

 

 

 

Vol.4に続く・・・・・

 

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2008年11月 6日 (木)

Memory of 19 Vol.2・・・

Radiohead-Let Down

まるで、まばたきや呼吸さえも気を使うくらいの

マヌケな状況の中のマヌケな姿の二人・・・。

この時の1秒は、在り来りかも知れないが

本気で1分位に感じらるくらい苦痛極まりないほど遅く時間が流れた・・・。

で、そんな状況で更に待つこと数分・・・。

着信のランプが光るのと同時に先輩の右手が静寂を破る・・・。

この小さな電話器、正面右サイド横側に、縦一列に並ぶいくつものボタンがあり

その一つ一つにランプが付いていて

着信の合図と共に緑色の点滅となり

この緑色の点滅が点灯状態になると

それが成功の合図となると同時に、通話が出来ていることを意味する・・・。

そして、この緑色の点滅がそのまま赤い点灯状態になると

この電話器以外の、ほかの部屋の誰かが一早く取ったことになり

それはすなわち「通話失敗」を意味するのである・・・・・。

 

で、その一発目・・・

先輩の表情は、普段柔道の試合で観ることがないような鋭い眼光と

その神業のようなボタンの早押しに私は圧倒された・・・。

で、結果、「」で、失敗する・・・。

「ぐあぁ・・・。今日、メチャメチャ早い奴がいるぜ・・・。」

私には全くわけのわからないそんなセリフを吐く先輩に

私も心の中で小さく叫ぶ

「(いやいや。あなたさまも十分早いっすよ・・・。)」

この先輩、失礼を承知で云わせてもらうと

柔道の試合や稽古では、決して「強い」ランクではなく

普段の練習でも全くやる気も魅せず、ただこなしているだけという存在である。

そんな先輩の

「(こんなライバル意識や闘志を剥き出しにすることがあったのか?!)」

「(いやいや。こんな「本気モード」の先輩の姿は初めて観た!!)」

ってな先輩の姿に先ず驚かされた・・・。

で、かんぱつ入れずに着信2発目・・・

これまた私には本当にコンマ数秒の違いかどうかの判断も出来ないくらいの差で

惜しくも「」、で、失敗・・・。

「あっ~くそっ!・・・次は負けね~ぞ!!・・・」

この人のこの湧きあがる闘志は一体何なんだ?!

と、私は思いつつも、口には絶対に出せず

二人またいつものセットポジションへ・・・

で、すぐさま3発目・・・で、これまた失敗!・・・

「あ~っ!くっそっうぅぅっ!!」

今度は先輩より先に私が悔しさを声に出した。

いや、これは私が別に悔しいうんぬんではなくて

失敗の後にやってくる、あの呼吸も許されぬくらいの

わけのわからない閉鎖された二人の空間にいい加減耐え切れず

思わず口から出てしまったのだ・・・。

「だよな~・・・。」

そして、二人の気持ちは全く違うハズなのに

この先輩もわけのわからぬ相槌で答える・・・。

そうこうして、やっと次の4発目にきて、初めて成功した。

ボタンが初めて「」に点灯したのである。

これには二人で同時に声を出してしまった。

「ヨッしゃーっ!!」

で、思わず二人で握手なんかするくらい喜んでしまったので

受話器を持つ私は、受話器の向こうの人間のことなど忘れてしまっていた。

「ハあっ!!」

っと先に気が付いたのは先輩で

喜び顔から一変、口をつむんでわけのわからぬゼスチャーを用いて

私に合図を送ってきた。

「ハあっ!!」

私も思わずここで気が付き

先輩と同じ悲鳴のような短い叫び声をあげてしまった。

で、少し冷静になり受話器を耳にあて、とにかく何を言っていいのか解らず

「こんちは~!」

と、緊張もする間もなく目一杯の撫声をつくり挨拶をした・・・。

「ツーッ・ツーッ・ツーッ・・・・・」

受話器の向こうの無機質な機械音に愕然となり

そのまま声を出さずに隣で暴れるようにゼスチャーを繰り返す先輩の耳元に

その受話器を当てた。

巨大なにやけ顔が真顔に変わり、「ガクンッ!」と顔を落とす先輩・・・。

下を向いたままの先輩から指導が入る

「おっまえよ~・・・!こんちは~。じゃなくて、こんばんわぁ~。だろ?!」

えっ?そこっすか?とも思ったが、確かに外は暗くなっていて

先輩のおっしゃることも、ごもっともであると感じたので一応謝る・・・。

「すませんっ!!」

しっかりと両膝に両手を付き、姿勢を正しながら深々と頭を下げる私に

「よしっ!次いくぞっ!!」

と、また先輩は臨戦態勢をとる・・・。

なんと頼もしい先輩だと、この時初めて見えてしまったから不思議だ・・・。

 

こんなことを幾度か繰り返し

落胆と笑顔を繰り返す中で、私のあいさつに普通に答えてくれた女性に繋がった。

何を話してよいか解らなかったが

受話器の向こうのとても優しく感じさせる声の雰囲気に

私は何故か確信めいたモノを感じ

自分のことのように声を出さずに喜んでいる隣の先輩に

「大丈夫っす!」と声を上げずにゼスチャーで答える。

すると先輩はすり足見事に、物音ひとつ上げずこの部屋から姿を消した・・・・・。

 

 

 

Vol.3に続く・・・・・

 

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2008年10月31日 (金)

Memory of 19 Vol.1・・・

Radiohead-You

私は仕事の中で、極少人数ながらも人を使う立場であるので

回りくどい言い方をするのもされるのも嫌いである。

がしかし、頭の中では

常に些細なことでも難しく考えるたちなので

どんなことでも回りくどい考え方をするのが好きなのである・・・。

で、そのことを実際に言葉として繋ぎ合わせ会話として誰かに話す時は

誓って仕事の場では無く

心を許す仲間達との場や、楽しいお酒の場のみとしている・・・。

だからと云って、お酒の場にてくどくどと同じ話をするワケでもない。

また、その場その場にあった言葉と雰囲気を考え

言葉を選んで繋ぎ、面白可笑しく話込むような器用な男でもない。

どちらかといえば、誰かの話すそのことを聞いて

自分の頭の中であれこれと組み合わせて想像し、楽しむ方が好きなのだ。

つまりはどういうことかと云うと

何かを話し聞かすことも好きだが

人の話を聞くことはもっと好きであるということだ・・・。

取分け、これは活字になっていたとしても同様で

書くことも好きだが、読むことはもっと大好きなのである。

特に好きなのが

言葉が言葉以上に物を語る話・・・。そう「物語」。

このことは、私が幼い頃祖父母に預けられた時期に

勤勉な祖父から書斎にある数々の「物語」の本を読み聞かせてもらい

同時に「本」とそれ以上にその「物語」の素晴らしさを

常々教え説かれた影響があるからかも知れない・・・。

なので、今でも物語の本を開くと

その日のうちに何が何でも読破したくなり

あらゆることに支障をきたす事さえもある・・・。

そんなことから、大作品の小説を手にした時は

それを読み切るまで何もかもが手を付けられなくなってしまうため

小さな「物語」で私は心を満たすようにしたのだ。

それが私の中では「音楽」なのである・・・。

小さな「物語」が凝縮されたような「音楽」にはまりながら

あらゆる「物語」が私の頭の中で想像することができた。

更に、祖父から読み聞かされて勝手に想像していた「物語」は

それまで頭の中で描くだけのものだった想像を

映像をもって、スクリーンを通して実際に観ることができ

しかも、小さな「物語」が凝縮された「音楽」もがそれに融合した「映画」は

「物語」好きな私にとって

もっとも強烈なインパクトを与え続けているものであるかも知れない・・・。

それほどに、私は「物語」が大好きなのである・・・・・。

・・・・・

・・・

 

時に19歳の頃の記憶というと、あなたにはどんな想い出があるだろうか?

19歳という年齢は、当たり前のことであるが20歳前の未成年最後の歳・・・。

私の当時を振り返ってみると

体つきはもうすでに「大人」と呼べるほどまで成長したが

精神的には、まだまだ「子供」気分も完全に抜け切れておらず

社会の端の一部に触れ始め、将来への希望や不安に揺れ動きながらも

自分が30代を迎えることなどは、その当時は全く考えたことも無く

情熱的に迫りくる日々を

新しく出逢った仲間達と共にワケもわからず走りまくっていた・・・。

なので

「未成年だけど、すぐ成人・・・。」

という、社会的には微妙な年齢である「19歳」の時

その前の青春時代を、一つの「目標」のためだけに捧げていた私は

ある意味その「目標」からやっと解放されることができ

更には、失った青春を取り戻そうとあらゆる世界を経験したくて

寝る間も惜しんで日々奔走していた記憶がある・・・。

今回は、そんな私の淡い青春時代の小さな想い出の一つの物語である・・・・・。

 

何回もココで書いてきたように

私は高校を卒業すると地元を離れ、東北は「仙台」の地が

新しい進学先であり、生活の拠点となった・・・。

高校生時代、この仙台には部活の遠征やらで数回訪れたことはあったが

その時訪れた感覚と、実際その地に住んで感じる感覚は、当然違いが在り過ぎ

伊豆の田舎には無い「街」の雰囲気に

私は身も心もさらけ出して、勉学なんかはそっちのけで

いっつも、いつも

訪れるとは限らない「何か」という

これといって、はっきりと答えることの出来ない「何か」と

それと同時に付属のようについてくると感じた・・・

いや、そう感じていただけのような

「刺激」と「トキメキ」を常に求めていたのであった・・・。

なので、この仙台にて「サーフィン」に出逢ってハマっていってしまったのは

体育会系出身の有り余る「チカラ」をもてあそんでいた私には

当然の成り行きであったのかも知れない・・・。

そしてこの歳頃の、この「刺激」なるものの大半は

純粋な「心」を満たすような優しく優秀なモノなんかでは決して無く

特に、下半身の「想い」を中心とした邪(よこしま)な「刺激」を求めるが如く

湧き出すエネルギーを「不純な行為」に費やすことばかりも考えていたワケだ・・・。

 

この当時、まだ「携帯電話」はそれほど普及しておらず

学生身分であった私に至っては、持つことさえも考えられなかったくらいの代物・・・。

で、この当時

日本中の電話事情(?)を悪漢していたものは何かと云うと

今ではすっかりその名を聞くことも無くなった、「テレクラ」・・・。

伊豆の田舎から出て来たばかりの私は

この「テレクラ」なるモノの名前だけは聞いたことはあるが

寮の先輩に初めて連れられて行くまでさほど気にも留めていなかった

全く事情もシステムも解らない、未知なる代物であった・・・。

 

秋も深まったある日の休日

同郷でもなんでもないのに何かと私のことを可愛がり

そのおかげか、私は一切頭の上がらない存在となっていたある先輩に

初めてこの「テレクラ」なるものに連れて行ってもらい

私は初めての「テレクラ」にゴーフォーイットすることとなった・・・。

そこは、何とも云えない今まで全く経験したことがないような

本当に独特の雰囲気を兼ね備えた空間となっていて

もちろん一人一人が個室に案内され、その狭い部屋に存在するものは

お世辞にも綺麗とは決して呼べない一人掛けのソファーと

エロビデオが流れっぱなしのTVと、何故か箱のまま置いてあったティッシュBOXと

プッシュホン式電話機のみ・・・。

システムと事情の良く解らない若造の私が先ず飛びついたのが

電話よりもむしろ刺激的なエロビデオの方で

鳴ったか鳴らないかのウチに切れる電話の音は

全く気にもならないで放って置いていたのである・・・。

そんなこんなで数分ほどすると、私の部屋のドアをノックする音がし

そのドアを開けてみると

そこには、私をここに連れて来た張本人の先輩が立っていた。

「オイっ!何やってんだ?!アポ、一つくらい取ったか?」

「え~っ!なんすかそれ?つか、この電話、鳴ってもすぐ切れるっす!・・・」

と、私・・・。

「ばっかだなおまえ!電話が切れてんじゃなくて、誰かがもう取ってんだよ!」

ここで初めて、この「テレクラ」のシステムと電話のカラクリを説明され

結局、この先輩にそのままこの場でレクチャーを受けることとなった・・・。

その姿は、今でも思い出すと本当にマヌケ極まりない姿で

ただでさえ狭い個室なのに、ただでさえ余計にガタイのいい若者二人が

一人掛けのソファーに無理して前かがみに座り込み

鼻先から30cmとないところにある電話機の着信ランプが光るのを

一人は受話器と本来受話器に押さえられたままのボタンを押したままの体勢で

もう一人は着信を取るためのボタンを触り

かろうじて息はできるが、唾を飲み込むことすら許されないような

異常とも云える緊張した空間と状況を創り上げ

眉間にしわを寄せながら男が二人真剣に

小さな電話機に向かってにらめっこをしているのだ・・・・・。

 

 

 

Vol.2に続く・・・・・。

 

 

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